イリジウム衛星をみよう
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夜空にぴかっと鋭く輝く人工衛星があります。
衛星携帯電話に利用する数十個の衛星群。「イリジウム衛星」です。

 イリジウム衛星観察の魅力
イリジウム54のフレア(閃光)  イリジウム衛星本体は決して明るく見えることはありません。しかし,反射率の高い金属の平面アンテナを3枚搭載しており,時折,このアンテナに太陽光線が反射し,マイナス数等級という金星をしのぐほどの閃光(フレア)を見せることがあります。
 継続時間は十数秒と短いのですが,空の暗闇の中から突然きらりと輝きだし,次第に光を失っていく様は,他の人工衛星には見られない醍醐味があります。

 そもそもイリジウム衛星ってなに?
 1990年モトローラ社が提案した携帯衛星通信サービス「イリジウム計画」に沿って,数十個の通信衛星が高度780kmの地球低軌道に配置されています。これらの衛星群をイリジウム衛星と呼び,当初は77個(だから原子番号77番でイリジウム)で全地球領域をカバーする予定でしたが,その後,計画が修正され66個(※1)の衛星で運用されています。
 このイリジウム衛星には,鏡のような反射率の高い金属製アンテナ板が計3枚設置されており,太陽の光がここに反射すると地上で衛星反射光による閃光(以下フレアと呼ぶ)が観察されます。イリジウム衛星は姿勢がある決まった角度で制御されていますので,衛星位置・太陽位置・アンテナ角度などを考慮すると,フレアがいつ見えるのかを計算で求めることができるのです。

 ※1 現在はバックアップ衛星も含め,もっと多くの衛星で運用されています。

 イリジウム衛星の見え方
イリジウム7のフレア  人工衛星は,日の入り後か日の出前に多く見ることができ,イリジウム衛星も基本的に同じことがいえます。しかし,通常6等級と肉眼では見えない明るさながら,条件が揃った瞬間に大フレアを見せるという点で他の衛星と大きく異なります。このときの明るさは,反射光の照射角度や,反射光の中心からの距離など条件によって異なりますが,最も明るくなるときで−8等級という金星(−4等)をはるかにしのぐ明るさに達します。
 この様子は「夜空に突然灯台が現れた」とか「空からサーチライトで照らされているようだ」などと喩えられるほどで,そのダイナミックな明るさの変化は見応えがあります。そのため,特に明るい流れ星(火球)との勘違いや,UFO騒ぎになる場合もあったようです。
 イリジウム衛星は地球を回り続けていますから,衛星アンテナが太陽光線を反射させるのは,地上の十数キロメートルの細い帯状の領域になります。もちろんその中心に近ければ近いほど,衛星は明るく輝いて見えるわけです。観測場所がこのような領域に含まれる確率は一個の衛星としてみれば非常に低いものですが,イリジウム衛星の場合,数十機もある訳で,ほぼ毎日,何らかの形でフレア現象を観測することができます。

 観察の実際
 まず,いつ,どの方向に見えるのかという予報を入手する必要がありますが,幸いこれについては「イリジウム衛星の情報(府中天文同好会・怪鳥さんのページ)」から,ホームページ上で簡単に入手することができます。後に示す別記事にある『「イリジウム衛星のフレア予報」メール配信サービス』も,登録すれば数週間分の予報がまとめてメールで送られてくるので重宝します。

 それと,観測場所を選ぶ際にも注意が必要です。通常の人工衛星では,100km移動しても見え方に大差はありませんが,イリジウム衛星からの反射光は細い帯状の地域に限られるため,10km観測地点が違っただけでも明るさに大きな差が出てしまいます。となり街の知り合いと携帯電話で話ながら観測したら,両地点で明るさがぜんぜん違ったなんてことも,本当に起こり得ます。自宅の位置で計算された予報は,遠く離れた会社ではほとんど役に立たないはずです。イリジウム衛星の観察には,観測地点を絞り,その正確な位置情報(緯度,経度,標高)から求めた予報を使用することが重要です。
 また,イリジウム衛星のフレアは10〜20秒の短い時間内にすべてが終了してしまいます。その間に衛星を見つけられなければ,それまでの苦労が水の泡です。余裕があれば衛星が星空の中のどのあたりを通過するのか事前に調べておきましょう。これについても上記のサイトの計算結果から確認することができます。

 直前までの準備はこれでOKです。後は余裕を持って予報時間の5分前には観測場所でスタンバイし,衛星が見える方向,高さをしっかりと確認しておきます。そして,予報時間が近づくと予報の位置にゆっくりと動く光点・イリジウム衛星が見えるはずです。見え始めるとだんだん光度を上げ,10秒程度フレア状態となった後は次第に減光して見えなくなってしまいます。イリジウム衛星はこのように明るさの変化が劇的なので,変化が全く確認されなかった場合や,数分にわたって見え続けていた場合は別な人工衛星を見ていた可能性も考えられます。
 しかし,イリジウム衛星の中には,うまく姿勢が制御できていないものも含まれており,こうした衛星は予報が想定通りに反射光を投射してくれないため,こうした衛星では,残念ながら『からぶり』の結果に終わることがあります。

 昼間の青空の中に見えたイリジウムフレア (1998.7.17)
昼間のイリジウムフレア  イリジウム衛星の明るさは,最も明るくなったときで−8等級に及びますので,理論上,太陽が出ている昼間の青空の中でも確認できることになります。肉眼でも楽に見えたという報告はたくさんありますが,にわかには信じられません。論より証拠,さっそく試してみました。
 右のアニメーションGIF画像は98年7月17日18時14分にイリジウム15を捉えたものです。アニメーションGIFですので,マシンのパワーによっては衛星の動きがかなりぎこちなくなるケースがありますのでご了承ください。
 カラーCCDカメラにカメラ用100mmレンズを取り付けての撮影です。映っている衛星は,サイズをかなり小さくしてますので貧相ですが,元の映像では十分余裕で映っています。昼間の星が見えない青空ですので,予報が示す方向に正しくカメラを向けるのが困難ですが,それさえできれば,家庭用のビデオカメラでも十分とらえることができると思います。

 「イリジウム衛星のフレア予報」メール配信サービス
 毎週,任意の観測地の予報をメールで無料配信するサービスです。前後,数週間分の予報がメールでご提供します。登録をご希望の方は,下記のアドレス宛に「イリジウム衛星予報メール配信希望」の旨を明記の上,1.名前 2.メールアドレス 3.観測地名 4.経度 5.緯度 6.標高(m) を漏らさずお知らせください。
(自動受付ではないため,お返事に時間を要する場合があります。)

 登録受付:mishima@oka.urban.ne.jp サンプルはここ

 イリジウム衛星関連のリンク集
  • 解説 :  イリジウム衛星の情報
     府中天文同好会・怪鳥さんのページ

  • 解説 :  イリジウム衛星の解説(英語)
     Visual Satellite Observer Home Page

  • 解説 :  衛星通信システム「イリジウム」
     JAXA(宇宙航空研究開発機構)・スペース百科

  • 観測予報 :  イリジウム衛星のフレアを計算するサイトへのリンク (オススメ!)
     観測地の場所を日本地図上からクリックすると,自動的にオンライン人工衛星計算サイト「Heavens-Above」(英語)にアクセスしてくれる,初心者向けのとても便利なページ。府中天文同好会・怪鳥さんによる。

  • 観測予報 :  Heavens-Above!(英語)
     ホームページ上で,人工衛星の観測予報を計算してくれる世界最強の人工衛星計算サイト。上記の怪鳥のページを経由してアクセスすると簡単便利。


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